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強豪「南アフリカ」に勝って試合の流れに余裕ができたのでは? [スポーツ]

日本は1試合ごとに急激に強くなる!岩渕GMが語る、アメリカ戦への視座。    (2015/10/10    Number Web)

こんにちは。ラグビー日本代表GMの岩渕健輔です。今回はW杯イングランド大会、第4戦となるアメリカ戦のプレビューを兼ねて、先日行われたサモア戦について振り返ってみたいと思います。

 ご存知のとおり日本は26-5で勝利を収めましたが、チーム全体が充実したコンディションで戦いに臨んでいる様子は、すでにウォーミングアップの段階から感じられました。フィジカルコンディションの善し悪しというよりは、むしろメンタルの面においてです。

 たとえば第2戦のスコットランド戦の場合は、南アフリカとの試合からわずか3日間を挟んだだけでの連戦となったため、選手はフィジカルコンディション以上に、メンタル面での準備に苦戦している印象を受けました。

 語弊のないように述べておくと、選手たちはスコットランド戦にも必勝を期して臨んでいましたし、南アフリカ戦の勝利の余韻に浸って、浮かれているような人間は一人もいませんでした。また私たちはコンディションの差を絶対に言い訳の材料にしたりすることがないように、前々から過酷なトレーニングも積み重ねてきました。

強豪との連戦は、メンタル的な消耗が大きい。

 しかしこのような準備を持ってしても、「ティア1」の強豪国と中3日で連戦する、しかもW杯の大舞台で戦うという状況は、メンタル面で選手を消耗させていました。それが判断の遅れや致命的なミスにつながり、最終的に大差での敗北を招いてしまったのです。

 対照的にサモア戦では、どの選手も頭の中を完全にリセットした上で、再びコンセントレーションを高め、万全の状態で試合会場に入ってきていました。極論するならば、これはコーチングスタッフについてさえ当てはまります。

 私が受けた印象は、実際に試合が始まった後も一貫して変わりませんでした。

 まず攻撃に関しては、もっとトライが奪えたはずだと感じる場面もたしかにありました。しかし選手たちは、ゴールラインが視野に入った後も、スコットランド戦よりはるかに冷静にプレーしました。焦って攻め急ぐような場面も少なかったことが指摘できます。

 一方守備に関しては、サモアが日本陣内の22メートルラインの中に入ってくるケース自体、ほとんどありませんでした。この傾向は、前半は特に顕著でした。

個を押し出してきたサモアにもユニットで対応。

 日本代表がゲームプラン通りの戦い方ができていたことは、スタッツにも反映されています。たとえば獲得したテリトリーでは64%対36%、ボール支配率が59%対41%といずれもサモアを凌駕しています。タックルミスこそ31回対25回でサモアに劣っていますが、スクラムの成功率は100%、さらにはラインアウトも13回中12回中マイボールをキープするなど、日本はセットプレーも安定していました。

 このような書き方をすると、スタッツで上回っていたのは、前回のスコットランドも同様だったのではないか? と指摘される方もいらっしゃるかもしれません。しかしスコットランド戦との対比で述べるならば、スタッツでも上回り、かつ試合の流れを左右するような重要な場面でも、質の高いプレーを展開していたのが、サモア戦における日本代表だったのです。

 結果、サモアは時間の経過とともに集中力を失い、組織ではなく個の能力に頼ったプレーが増えていきます。

 むろん、このような流れになればなったで、今度は違った種類の危険性が生まれてきます。現に後半には選手の足が止まり、サモアにワントライを返される場面もありました。それでも日本代表は精神的に崩れることなく、最後までユニットとして戦い抜くことができていました。

サモアは、勝って然るべき相手だった。

 試合後にはメディアの間で、ボーナスポイントを狙うべきではなかったかという議論も起きました。しかし選手たちが試合後に述べたように、チームとしてリスク管理(サモアの選手に個の突破力でトライを奪われるパターンの回避)をしながら、勝利をもぎとった点は落ち着いていたことの証明でもあると思います。

 前回のコラムで指摘したように、サモアは南アフリカやスコットランドとは異なり、日本にとっては勝って然るべき相手でした。このような相手にゲームプラン通りの戦いを仕掛け、勝利をものにできたというのは、チームに地力がついてきた証拠に他なりません。

プラン、努力、そしてリセットさえあれば。

 戦いが持つ意味は、4戦目のアメリカ戦も同様です。アメリカは0勝3敗の状態で日本戦に臨むだけに、南アフリカを破って一躍注目を浴びた日本を倒し、自分たちの存在をアピールしようと躍起になってくるでしょう。ましてやアメリカには、W杯の戦績では日本を上回ってきた(アメリカは過去のW杯で3勝を記録)という自負もありますし、フィジカルに絶対の自信を持っています。

 そのような相手を迎え撃つ際に鍵になるのは、やはりメンタルの強さです。

 日本はイングランド大会ですでに2勝を挙げました。日本ラグビーの歴史を変えたということもさかんに言われています。だからこそアメリカ戦では堂に入った戦い方をして、勝って然るべき相手であるアメリカを、冷静に仕留めていくことが必要になるのです。

 緻密な強化プランに基づき、合理的かつ最大限に努力を積み重ねた上で、メンタルをリセットする時間さえ確保できれば、日本は世界の舞台でも必ず結果を出せる。

 このことが実感できたのは、サモア戦の大きな収穫だと言えるでしょう。日本代表は南アフリカ戦で得た手応え、すなわち自分たちが目指してきたラグビーの方向性は間違っていなかったという強い自信と、スコットランド戦での苦い敗戦を糧にして、チームとしてW杯大会期間中に成長しています。

 ただしチームの成長は、私たちに新たな目標も提示しました。メンタルをリセットする時間が最小限になった場合にも、本来の戦い方を繰り広げ、確実に勝利をもぎ取れるようにするという課題です。ラグビーチームという生き物は、こうして不断の進化を遂げていくのです。

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強豪「南アフリカ」に勝ったことが次の試合でも頑張れるという自信ができたのではないでしょうかねぇ? 現在はインターネットの普及もありで相手チームの戦い方を研究できる資料・映像を見つけ出すこともできますから戦い方の傾向と対策ができているのではと? 監督やスタッフが選手の体力・精神面を良い方に引き出す努力しているんだろうな…と考えずにはいられませんね。


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